研究内容概要

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ここでは、これまでの私たちの研究内容について記載したいと思います。

 

1)骨と脂肪、糖代謝の相互関連性

特に私の専門分野である糖代謝、動脈硬化関連因子と骨代謝の関係性や、糖尿病患者の合併症としての糖尿病性骨症について興味を持って研究してきました。

 

近年、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインや膵臓から分泌されるインスリン、肝臓より分泌されるインスリン様成長因子(IGF-I)、血糖指標などが骨代謝に関連していることが明らかとなっています。また、逆に骨から分泌されるオステオカルシンという蛋白に糖、エネルギー代謝などに影響することが報告されてきています。

 

我々はin vitroの研究でアディポネクチンの骨代謝への影響や臨床研究において骨代謝と糖、脂肪代謝指標との関係性の検討を行ってきました。

 

この分野は比較的最近になってから認識されるようになってきていますが、まだまだ不明な点も多くあると思います。従って、新たな知見をどんどん積み重ねていくことが必要だと思っています。

 

2)AMPキナーゼによる骨芽細胞制御機構

レプチンやアディポネクチンの作用のkey moleculeとして重要であるAMPキナーゼは糖・エネルギー代謝の分野では精力的に研究がなされていましたが、骨の分野ではほとんどその役割についての検討はなされていませんでした。

我々は骨芽細胞におけるAMPキナーゼ活性化が骨芽細胞の分化、石灰可を促進することを初めて見出し、以降は他の研究者からも同様の報告がなされるようになってきています。

 

アディポネクチンや糖尿病治療薬であるメトホルミンがAMPキナーゼを活性化することが明らかとなり、まだまだ未解明なことは多いですが、今後の骨疾患の治療や骨とその他の組織との関連性を検討する上で重要な検討項目であると思っています。

 

3)糖尿病の骨脆弱性

1型糖尿病患者ではインスリン欠乏により骨量が減少しますが、一方で2型糖尿病では骨量は維持されます。しかしながら、1型糖尿病ではその骨量低下の程度で想定されるリスクに比べて数倍骨折リスクが上がっており、2型糖尿病でも骨量低下がないのに大腿骨骨折リスクが約1.7倍に増加していることが明らかとなりました。

 

従って、糖尿病患者では骨量の低下のみならず骨質の劣化というのが重要であると考えられています。しかしながら、なぜ骨質が劣化するのか、どのように糖尿病患者の骨質を評価するのか、あるいは脆弱性骨折を予測するのかについては不明な点が多いのが現状です。

 

我々は2型糖尿病患者の骨量、骨代謝マーカー、椎体骨折などを指標としていくつかの研究を行ってきました。その中で血中IGF-Iやアディポネクチンなどが骨折の予測因子である可能性を見出してきています。この分野はようやく研究が始まりだしたところであり、実際の診療でどのように糖尿病患者の骨リスクを評価するのか、臨床的視点において非常に重要な課題であると思っています。

 

4)糖尿病の動脈硬化症

以前より糖尿病では動脈硬化性疾患のリスクが約3倍高いことが言われています。一般的なリスク因子である肥満、コレステロール、高血圧なども重要な因子ではありますが、その他にも糖尿病患者に見られるその他の代謝異常も重要であると考えられます。

 

生活習慣病、動脈硬化症、骨粗鬆症はいずれも年齢とともにその頻度が増加する疾患でありますが、これまでは別々の疾患として扱われてきました。近年、生活習慣病、動脈硬化と骨粗鬆症の間に相互関連性があることが報告されるようになってきており、我々もその視点からこれらの疾患に重要である因子に関心を持っています。

 

我々はADMAやDHEA-Sなどが2型糖尿病患者の動脈硬化に影響していることを臨床的な検討により見出してきています。この研究により動脈硬化や骨粗鬆症の両者に重要である因子を見出すことができれば、両者に有用である治療法の開発やガイドラインの作成に新たな提言ができる可能性があると思っています。