体内時計と生活習慣病

12月15日

Diabetes Scientific Update Meetingが京都の国立京都国際会館にて開催され参加してきました。

会では特別公演が3演題ありました。

山口大学 谷澤幸生先生 β細胞から見た糖尿病の病態と治療

大阪大学 下村伊一郎先生 肥満・メタボ型日本人2型糖尿病の病態と対策

山口大学 明石真先生 概日時計と現代疾患

日本2型糖尿病は欧米人とは違い高度の肥満がない状態(BMI 24程度)でも糖尿病の発症リスクが増えてきます。その病態として、インスリン分泌能の低下が重要な要因であり、谷澤先生からはインスリン分泌機構のメカニズム、特に山口大学で精力的に研究が進められているERストレスについての講演がありました。

また、高度の肥満がないにも関わらず糖尿病を発症するメカニズムとして、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの異常が重要であり、特に下村先生からは大阪大学で初めて報告されたアディポネクチンについての講演がありました。脂肪細胞肥大化には酸化ストレスの影響が重要であり、下村先生からは脂肪細胞由来の酸化ストレスという新しい概念の話がありました。

谷澤先生も下村先生も糖尿病・代謝領域ではご高名な先生方ですが、教室での新しい知見を交えて講演していただき、とても勉強になりました。特に脂肪細胞由来の酸化ストレスについては、今僕がやっている研究の題材としてもおもしろそうだなあと感じました。

第3番目の講演では概日時計(いわゆる体内時計)について、非常にわかりやすくお話をいただきました。約15年前くらいに体内には時間をつかさどる遺伝子があることが見いだされ、約24時間ごとにリズムを調節しているものを概日時計と呼ぶそうです。細胞一つ一つに時計遺伝子があるのですが、それらを一括して調節する時計遺伝子が視交叉上核にあるそうで、目から入った光刺激により毎朝リセットされているんだそうです。

また、消化管でも概日時計の調節がなされており、朝に起きて日光を浴びることと朝食を取ることは概日時計の生理的な役割を考えても重要なことなんだそうです。

概日時計が異常をきたすことによりインスリン感受性や分泌能に異常をきたすという論文報告もあり、紹介がありました。概日時計を調節することにより、今後生活習慣病の予防や治療の一助になる可能性も考えられ、非常に興味深いお話でした。

会が終わった後の懇親会では、島根大学第一内科出身の先生方と談笑し、楽しいひと時を過ごしました。

写真は宿泊したホテルのロビーに会ったクリスマスツリーです。いよいよクリスマスが近づいてきましたね。ノロやインフルエンザが流行りだしているようですので、皆さん体調に気を付けてよい年末をお過ごしください。

金沢一平 糖尿病と骨粗しょう症専門医からの提案